■2006年5月21日(日曜日)
近況。
パソコン作業中に雨が降ってきて雷もゴロンゴロン言い出したので慌ててシャットダウンしてコンセントを引っこ抜く。もう通りすぎたかな〜というところでコンセントをぶっ差してマシンの電源ボタンをポチっとな。
無反応。
もっかいポチっとな。
やっぱり無反応。
1時間後、祈りを込めてポチっとなするも虚しくボタンの「カチ」という音が響くだけ。
ああああああなんで壊れるんじゃああああああ
速攻で買ったお店に電話し(お店の延長補償に加入しているので)状況を説明し宅配便で送る。
でもなー、明日届いてもそれからメーカーに発送するんじゃゴールデンウィーク明けにならないと修理して貰えないよなー。
オークションの取り引きやらなんやら、携帯では限度のある作業をしに妹宅に赴く。
「オイラのアカウント作ってアドミン権限付けていい?」
「それなに? おいしい?」
構わずユーザーアカウントを作成する。しかし妹のマシンはお絵描き用にモニタが21インチで解像度が凄い事になっているため普通のブラウジングには全っ然向いてない。フォームのボタンに書いてある字が読めないなんてザラ。よくこれで普段サイト見てるなあ。
取りあえずFirefoxだけ仕込んでメールをチェック。Gmail使ってて本当に良かった。
しかし困るのは各種スケジュール管理を全部櫻井君に任せていたため、いつ何があるのかさっぱり把握できない事。胃カメラの日程すら手元には控えていない。最近はやりのwebスケジューラ使おうかなあと本気で考える。いや、紙に書くのが一番か。
風の強い日。美容院の開店祝いの花台が倒れていて鉢植えがいくつか転がっていたので、立て直そうと四苦八苦していたらそこに強風が吹いてきて開店祝いの立て札が頭を直撃する。一緒にいたはずの妹が少し離れたところで笑い転げている。ちきしょう。
パソコンが使えないとなるとこんなに時間があるのかという感じで毎日ホゲーと過ごしていたが、これではいけないと奮起して部屋の片付けに取りかかる。
ずっと気になっていた廊下を這うコード類を天井に貼り付けるべく100円ショップでコード押さえを買って来て作業に取りかかる。脚立を取り出しての本格作戦である。
が、今は物置と化しているハイベッド(高さ70cm)によじ登りコードを整理して降りる時に足を滑らせ思いっきり腰を打ちつける。しばらくは声も出ず。腰から落ちたはずなのに気がついたらうつ伏せになっているのはなんでなんだろうとか、部屋の片付けをしておいたおかげで余計な怪我をせずに済んでよかったなとかいろんな事を考えながら床に転がっている珍獣一匹。どうやらヤバいところは避けられ普通の打ち身だけのようだったのでそろそろと起き上がってよろよろと作業に戻る。こういう時、一人暮らしって侘しい。
家が近いのをいい事にちょくちょく妹のパソコンを借りてはメールチェックなどしているのだが、マシンを立ち上げるといつもウイルスバスターのエラー画面が出てくる。ちゃんと更新してるのかと聞くと「毎年お金払ってるよ」という。
…
どうも気になったのでアイコンにマウスを合わせてみたら「ウイルスバスター2002」というポップアップが。今年が何年だったか思い出すまでしばし時間がかかったものの、気を取り直して設定画面からアップデートを試みるもあえなくエラーに。
「更新する時にバージョンアップしろって通知もきてるんじゃないの?」
「え〜振り込み用紙がくるから払ってただけ〜」
どういうサポートしてんだトレンドマイクロ。
すぐさま問い合わせさせると、ユーザー登録さえ有効なら無料でバージョンアップができるとのことで速攻でサイトに行き最新版をダウンロードしてインストール。その間、宇宙人でも見るような表情でオイラのやることを見ている妹。
「あたしパソコンに向いてないんだよ」
「そうだね」
結局、半年くらいまともにウイルスチェック出来てなかったらしい。あな恐ろしや。
スーパーコミックシティで妹のサークルの売り子。
前日はひたすら紙を折ってホチキスで留めていた。自分の本じゃないのに。うう。
終了後、在庫を引きずりながら「腰もまだ痛いしこのまま帰ろうかな〜」と思ったが、東京駅でSuicaで利用できるコインロッカーを見つけてムラムラと使ってみたくなり、ここに在庫を突っ込んで秋葉原に向かう事に。そう、中古でいいからパソコンが家にないと気が狂いそうなのよわたし。
斯くして秋葉原に降り立つと駅前にいきなりメイドさんが。うわあ、ホントにいるんだあ。思わず携帯で写真を撮ってみたり。
取りあえず、今修理に出しているマシンを買ったお店に行ってみると中古は扱っていませんとの事で、他のところを回ってみるかあ…となんとなく店内を見回してみたら展示品限りで非常にリーズナブルなお値段のノートパソコン発見。企業用モデルなのでOSしか入っていないしモバイルには向かないゴツさだがその分スリムなやつより断然安い。
「これ下さい」
晴れてサブマシンがオイラの手に。あー買っちゃった。
ショタケットで妹のサークルの売り子。
イベント終了30分前になってコピー誌を作り出したサークルさんがいて驚く。おまけに結構な行列。名前が売れてるってのは強いよなあ。
サブマシンのセットアップでアップアップ。
Firefoxを使う場合にはMozBackupが必須だと痛感。
映画「リバティーン」を見に行く。
ジョニー・デップが17世紀の英国の放蕩貴族を演じるというので近場の映画館に見に行ったのだがタダで見れてしまった。
いわゆる複合レジャー施設って感じの建物なのだが映画館のある2階フロアにチケット売場が見当たらず、「シネマはこちら」という案内板に沿って歩いて行ったらそのまま劇場の中に入れてしまったのだ。
映画の内容は予告編で見たほどのエロさも激しさもなくてなんだかなーという感じだったのだが、元々が舞台劇でセリフの妙が売りの作品らしく、英語がよほど堪能でなければシェークスピアとかあらゆる文学作品からの引用とかそういうのが解らずこの映画を味わい切る事ができないらしい。むう。
しかし、ジョニー・デップはハンサムさんだがエロさにかけてはあっちゃんに敵わないね。考えただけで口元がニヤける、姿を見ただけで心拍数が上がる、目が合った(と思い込む)だけで妊娠しそうになる、ライブ後は女性ホルモンがダバダバ分泌されお肌がツヤツヤになる、そんな男なかなかいるもんじゃないわよね。
この役をあっちゃんが演ったらさぞかし似合うであろう。
パソコンが修理から帰って来た。
ワクワクドキドキで立ち上げてみるといきなり鷹の爪団の壁紙が…これを修理の人に見られたのかあ…久しぶりに見るマイパソなのに、ちょっと(ノ∀`)アチャーな気分に。
そして動作確認以前にMicrosoftUpdateの嵐で何もできない罠。
頭脳パン「頭脳博士合格祈願千社札」プレゼントにいきなり当選してしまった。
苦あれば楽あり、楽あれば苦あり。人生は糾える縄の如し。
これを機に頭脳パンブログを立ち上げようと心に誓う。
雷サージ機能付タップを入手し、本格的にメインマシンを立ち上げる。
本当はUPS(無停電電源装置)も導入したいところだがこれはオサイフと相談。
まずはバックアップをがっつり取ってディスク内を整理。サブマシンを使っていて、「あれはなくても困らないもんだなあ」というアプリがいくつかあったのでそういうやつをがさがさっと削除。シンプルイズザベストなりね。
てな感じでございました。
その間も2ch SNSの方ではしょーもない事を書き散らかしてうっぷんを晴らしておりましたが、やはりわが輩のメインはここなのよ。
はーやっと帰って来れた〜〜〜〜〜〜。
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■2006年5月24日(水曜日)
胃カメラ飲んできました。鼻から入れるやつじゃなく口から飲み込む従来型でした。ちきしょう。
検査着に着替えて待合室で検査の説明書きを見る。え、「前日の食事は21時までに済ませて下さい」って、事前に貰った説明書には20時までにって書いてあったじゃないかあ。きー、そしたらデザートにアイス食べても良かったんじゃないかあ。と憤慨していると、おちょこくらいの小さいコップに入った白濁した液体を渡される。
「胃をきれいにする薬ですから一気に飲んで下さい」
ぐび。味はない。次いで、とろりとした半透明の水飴みたいなものをコップに入れられる。
「喉を麻酔する薬ですから口の中に含んで喉の方まで届くように上の方を向いて10分くらいしたら吐き出して下さい」
ぐび。これは苦い。なるべく喉の方に薬剤を行き渡らせたいがそうすると飲み込んでしまいそうになるので一人静かに内心オタオタする。
と、隣の検査室から「うえっ」「おげっ」とこの上なく苦しそうな男性のうめき声が聞こえてくる。やーーーめーーーてーーーー。せっかく緊張をほぐそうとあれこれどうでもいいことを考えて気を紛らわしてたのにっ。つか、マジでそんなに苦しいわけ? 一気に押し寄せる不安。
やがて口の中は麻酔でシビシビになってくるがなかなか喉の方まで効いてる感じがしない。必死で上を向くが飲み込んじゃいけないと意識する余りか喉が開かない。これじゃあ麻酔が効かなくて自分も「うえっ」「おげっ」になるんじゃないのか。ルゴールみたいに喉に直接塗れないもんなんだろうか。
その後、「胃の緊張を取るお薬です」と腕に一本やられる。採血以外の注射なんて久しぶりだなあ。
そうこうするうちに「うえっ」「おげっ」の人が検査室から生還。入れ代わりに名前を呼ばれる。はー。ついに来ちまったよこの時が。すごすごと中に入る。
メガネを外して診察台に載ると「喉の奥を麻酔しますねー」と霧吹きみたいなやつで口の奥におもむろにシュシュッとやられる。すんげー苦い。
「苦いですよねー。そのまま飲み込んで下さい」うええ。でもこれで麻酔はバッチリ? ちょっと期待。そこへ検査技師さんが登場。
「はーい、今日は胃カメラ初めてですかー、緊張せずに楽な気持ちで受けて下さいねー」そんなのムリムリムリムリかたつむりよ。
体を横にして寝そべり、口の中にマウスピースみたいなやつを入れられる。あー、これでもう抵抗できないんだわっ。
傍らでシューシュー聞こえるのは空気を送り込む音なんだろう。大腸ファイバーの時と同じような感じだ。モニターを見ようと思ったが自分の位置からはちょっと見にくかったので観念して目を閉じる。
「それじゃ入っていきますねー」
キタワァ…って痛え! 喉んとこが痛え! アタシ初めてなんですっ、もっと優しくして下さいっ。
「はいもう食道ですねー、楽に息して下さーい」
ああ…どんどん奥に入ってきてるのが解る…「うえっ」「おげっ」とはならないけど、ミョーな感じの違和感があっちからこっちへと移動していく。
「あー、確かにポリープありますねー」うひー。密かに治っててくれと願ってたんだが残っていやがったかっ。
「今度は十二指腸の方に入って行きますねー」ええもうどうとでもして下さい。
「あーこちらは問題ないですねー」そうすか。
「それじゃ胃の方に戻ってポリープの様子見てみましょうねー」え。見るんすか。
頭の位置はそのままに、上目づかいにしてモニターを見る。今映っているのは胃壁らしい。
「胃も食道も十二指腸もとってもきれいな状態なんですけど、胃にいくつかポリープがありますねー、ここ、わかります?」
と言って指差された部分には確かにぽちっとした白っぽい突起が。
「こっちの方にはポリープ予備軍みたいなのがありますねー」おお、吹き出物のような赤いのがいくつかありますわな。
「あと、これが一番大きくて7ミリくらいのやつですねー、これがレントゲンで引っ掛かったものだと思いますー」
うおー。いきなり乳首みたいなのがぽろっとありますよ。これも色は白っぽい。
「見た感じ悪くはなさそうですけど、調べるために組織取りますねー、ちょっと血が出ますからそういうのダメだったら見ないで下さいねー」
…(゚д゚)ハァ? 組織を取る、って何?
と、細いワイヤーみたいなのが準備され、それが中に入って行った模様…うおおお、なんかUFOキャッチャーのアームみたいなやつがモニターに現れてきましたっ。
「まずはこっちから、はい息止めてー」
小さい方のポリープがモニターに映っている。そこへアームが忍び寄っていく。「はい開いて」と技師さんが言うとアーム部分がぱかっと開いた。うおおおおお。なんかSF映画みたいっすー。アームの操作は助手の人なのか。
「はいそこでつまんで」
うひょー、ポリープがアームにがっちりキャッチされましたっ。と思う間もなく、つまんだポリープはぷちっとちぎり取られてしまった。傷みはない。血は出ているが大した事はない。ふーむ、こんなもんなのか。
「次は大きい方行きますねー」またもアームがやってきて乳首ポリープをつまもうとするが一度目は失敗。相手が大物過ぎるのか。が、二度目はしっかりキャッチ、そしてまたぷちっ。流血。
「あー、奥の方はもう血も止まってますねー。はい、これで終りですー」
結局ヨダレを垂らす事も涙目になる事もなく検査は終了。若干辛くはあったけど、「うえっ」「おげっ」にならずに済んで良かった良かった。
その後、技師さんから詳しい説明を受ける。前回撮ったレントゲン写真(バリウム飲んだ時のやつ)と今回の内視鏡写真を並べて、
「こっちのレントゲンに写ってるのが今回のこれのようですねー、見たところ悪い感じはしませんので、一応安心なさって大丈夫だと思いますよー」
ふー。ほっとしたところで疑問に思っていた事を聞いてみた。
「ポリープってどうして出来るんですか?」
「うーん、これといった原因はないんですよー、どうしてほくろが出来るか、みたいなものでしてねー」
「はあ、それじゃ食事の採り方で出来るとか出来ないとかそういうのではないと」
「そうですねー、ポリープ自体には予防方法というのはないんですよねー、普段心配する事は何もありませんからー」
ふーむ。そういうもんなのか。
検査室を出るとトローチを2粒渡される。
「1つは今すぐ舐めて下さい。麻酔が効いていますから飲み込まないように気を付けて。1時間後にもう1錠なめて下さい。飲み物は1時間後まで我慢して下さい。お食事は2時間後に、なるべく消化の良いものを採るようにして下さい。今からだとちょうどお昼くらいですね」
時計を見ると10時過ぎである。んー、まるまる一食抜きってことかあ。
ともあれ、思ったほど大変な目に遭わずに済んだし悪いものでもなさそうだし、今のところは「お疲れさん」って感じ。みなさんも健康診断は怖がらずにきちんと受けましょうね。
■2006年5月26日(金曜日)
「世界 本の日 サン・ジョルディの日記念 藤原正彦講演会」に行ってきた(「サン・ジョルディの日」自体はは4月23日なわけだが、気にしない事にする)。
招待ハガキと引き換えに新潮社の目録をわんさか貰ったのでてっきり新潮社主催なのかと思ったら、主催は東京都書店商業組合ということだった。ふーむ。
場所は東京江東区のティアラこうとう、17時30分開場の18時開演、招待ハガキに「講演中の飲食はお控え下さい」とあったので早めに行って良席を確保し(バクチク的に言うとあっちゃん前8列目)、コンビニで買って来たおにぎりをぱくついていたらおもむろに場内アナウンスが。
「ホール内での飲食・喫煙はお控え下さい」
オイコラ。だったら最初からそう書いとけっちゅうんじゃドアホ。思いっきり周囲の注目を浴びているような気がしたがロビーに出て行くのも面倒だったのでその場で1個を完食。ホントはもう1個食べたかったのだが諦めて開演を待つ事に。ちきしょう。誰が悪いんだ。
場内は老若男女入り乱れ、どちらかというとお年を召した男性が多い感じ。定員1300人という2階もあるコンサートホールだが(天井が高くて音が良さそう)、おそらく1000人弱は入っていたのではなかろうか。中にはランドセルをしょったまま母親に連れられてきたかわいそうなガキもいたが、この子は案の定講演中グダグダになってて、見ていて本当にかわいそうだった。子供がこんな講演聞いたってつまんねーだろうよ、なあ。ちょっとは考えろや母親。
まず、東京都書店商業組合の会長さんだかいう人が出てきてご挨拶。今回の講演の主旨(サン・ジョルディの日の事)とか、藤原さんの著書「国家の品格」が売れまくっているので私どもも大助かりです、みたいなお話をサクっと。
そして藤原さん登場。まるでおろしたてのようにピンとした明るめのベージュのスーツに濃い緑のポケットチーフというかなり気張った(ように見えた)お召し物である。あのスーツは肩幅がちょっと余ってそうに見えたがどうでもいいか。
わたしと藤原さんとの出会いは前にも書いたがテレビがきっかけだったので今さら外見には驚かないのだが(どういう意味だ)、藤原さん曰く、「国家の品格」は3万(部)も出ればいいなと思ってたら半年も経たずに200万(部)も売れてしまって、おかげでテレビやら講演会やら色々話がくるけれども、家族に言わせれば「国家の品格」の著者に品がないのがバレるからテレビには出るなとか、顔をずっと見てると気持ちが悪くなるとか言われる、のだそうで。「だからあんまりじっと顔を見ないで下さい」と軽く聴衆を笑わせたところでするっと本題に入った。
内容は、まさに「国家の品格ライブバージョン」といった感じで、本の内容に他のエピソードもちらほら交えながらのお話。語り口は穏やかだけれども、内容の手厳しさは本そのまま。特に最近経済界が色々なところに口出しして果ては教育現場にまで影響しようとしているのを非常に懸念しているというかとことん嫌っている様子だった。
講演後、質疑応答の時間があって藤原さんは数人の質問に非常に丁寧に答えていたのだが、ひとつとても印象に残ったやりとりがあった。
それは若い女性からの質問で、「国家の品格」では今の日本に必要なのは武士道であると書かれていて、新渡戸稲造氏の書いた「武士道」を読むと、命よりも誇りを重んじろとあるけれども、もしどうしても誇りか命か選ばなければならない場面が来たらどうしたらいいんでしょう、というもの(バクチク的に言うところの「CHECK UP」ですね)。
そんくらい自分で考えろよなーと思ったが、これに対して藤原さんは阪神大震災で略奪がなかった事を例にあげ、他の国では災害が起きると大抵略奪が行われるが、そういう、弱者の事を考えない火事場ドロボウ的な行為こそ誇りのない卑怯な事なのであって、そういうことをしないのが日本人の持つ惻隠の情(弱者を哀れむ気持ち)というものでしょうと答えたのだった。ふーむ。
ところがここで彼の女性が食い下がる。「もし、火事場ドロボウでもしないと死んでしまうという状況になったら、死んだ方がいいんでしょうか」。この人は自分がどうあるべきか自分の考えでは決められないのだろうか。
ここで藤原さんはこんな話をした。
最近、命の重さは地球より重いなんて考えがはびこっているけれどもそれはとんでもない間違いで、人の命なんて事故や病気やなんやかやでふいっと消し飛んでしまうような軽いものである、もし100人を助けるために自分が死ぬ事を選んだら宗教によっては聖者扱いされるかも知れないが実はそんなの偉くも何ともない(この辺りは講演中に話されたものだったかも知れない)。自分の母親は戦争中、食べるものが何もない時に他の家の畑から食べ物をかっぱらってきて自分達に食べさせてくれた、だからわたしは母が好きなんです、と。会場から拍手が起きた。
これは、武士道を論理だけで考えようとする事による行き詰まりを情によって解いて見せたという事なのかな。
といった感じでなかなか面白い講演だったのだが、物凄く引っ掛かる事がひとつだけあった。
藤原さんがベラルーシの友人(数学者)宅を訪れた時、季節が秋だったので紅葉を見に行ったら全部黄色だらけで面白くもなんともなくて(日本のように木も花も虫の種類もこんなに多い国はなかなかないのだそうだ。そういう風土が育む情こそが日本人にしかない品格を形成するのだというのが藤原さんの持論)、しょうがないから二日間キノコ狩りをして友人の奥さんに料理して貰っては毎日キノコばかり食べていたと。
で、後にその話を英国の友人(やはり数学者)にしたら、「マサヒコ、あのキノコを食べたのか」と聞かれたので、「ああ、たくさん食べたよ、おいしかったよ」と答えたら、「ベラルーシはチェルノブイリの北300キロメートル程のところにあるんだぞ、キノコは放射能を蓄積し易い、自分は決して食べなかった」と言われたと。そこで、そういえばおまけにあの日は南風が吹いていたなと思い出し、その日から毎日昆布を食べるようになった(藤原さんは昆布が放射能を排出するからだとおっしゃってましたが、実際には昆布に含まれるヨードが、放射能を被曝した際に誘発される甲状腺ガンの予防に有効、ということのようです。参考:ヨウ素 - Wikipedia、安定ヨウ素剤 取扱いマニュアル - REMnet)、と言う話なのだが、驚いた事にこの話に会場から笑いが起きたのである。チェルノブイリ原子力発電所の事故から20年経っても今なおその被害は続いているというのに、である。藤原さんもその英国の友人に対して「何てイヤなやつなんだろうと思いましたね」などと言って、まるで笑いが起きる事を予想していたかのような様子だったのにも違和感があった。今この場面には品格も何もない、そう思った。強い憤りと困惑が体中を駆けめぐってひたすらやるせなかった。
惻隠、すなわち弱者への思いやりこそが今の日本に欠けているという藤原さんの説が図らずも立証されたように思えて、なんとも言えない後味の残った講演会ではあった。
■2006年5月31日(水曜日)
先日の講演会で気になった事がもうひとつ。
質疑応答の時、質問をする人が誰ひとりとして「面白いお話をありがとうございました」とか藤原さんに対する感謝の念を述べなかった事。
おまけにみんな「藤原先生初めまして」とかとんちんかんな事言っちゃって、質問なんだか持論を展開したいんだか分からないような内容の発言が多かったような気がしたんだよなあ。
それってなんか仁義に欠けると思うのよ。
講演を聞いて、まずその人に対して「長時間お話しして下さってありがとうございました」っていう気持ちを持てないってのは、どこか心が貧しいような気がするんだよ。急にマイク持っちゃったりしてあがってたのかも知れないけど、みんながみんなその調子だったもんだから、なんだかなあって思ったんでした。
*
1歳4ヶ月になろうとしている甥っ子がようやく歩き出したらしい。
「らしい」というのは、こいつが保育園でしか歩く姿を見せないからである。妹がお迎えに行った時、偶然歩いている現場を発見して「うっわー! 歩いてるーーー!」と驚いていたら保育園の先生が「あらー、結構普通に歩いてますよー」だって。姪っ子もその姿を見て「わああ、○○くんが歩いてるー!」と大騒ぎ。知らぬは家族ばかりなり、ってか。
未だに家の中では一歩も歩かないそうである。環境が違うからなんだろうか。謎だ。歩くところが見たいなあ。