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slip into chaos - 日々録(2007年6月)

2007年6月6日(水曜日)

こないだようやくムーンライダーズのDVD「マニアの受難」(Amazonタワレコ)を見た。3月発売だったのに今まで塩漬けにしちゃってた。映画の公開からDVD発売までえらく早かったんだよなあ、地方を回るような映画じゃなかったからか。でもファンには嬉しい事だよね。いきなり3枚組で12,000円とは受難にも程がある〜と思ったけど、蓋を開けてみれば、30年を振り返るドキュメント映画・30周年記念ライブ映像・マニア垂涎のお宝映像と、これなら12,000円でもお釣りが来ちゃうよ、ってな充実しまくりの内容。

ライブ映像見ててつくづく思ったけど、この人達ってバラバラにして放っておいてもそれぞれが自然に勝手に音楽やってそうな感じなんだよなあ。それがミュージシャンってものなのかも知れないけど、とにかく、音楽なしじゃやってけないよ、音楽やりたいからここにこうやっているんだよって、そういう音なんだ。

映画の方には、この業界で食ってくってのはそんな単純な事だけじゃないんだって証言がそれはもう嫌と言うほど詰まってるのだけど、それでもやっぱり根底にあるのは「音楽が好きだから」って事でしかなくて、メンバー全員がそれぞれに自分の中に住まわせている音楽というものがあってこそのムーンライダーズなんだなあってしみじみ思う。

試写会で初めてこの映画を見た時、ああ、ムーンライダーズってのは東京の民謡なのかも知れないなあと思ったものだけれど、この野音のライブを見てると尚更そんな風に思えてくる。東京というか京浜工業地帯か。泥臭い東京という土地の土着の音楽。時が経つにつれ形は変わりつつも、どうにも変わりようのない、断ち切りようがない、東京というちょっと特殊な地方だからこそ生まれ得た唯一無二の音楽。

誰が歌っても誰が演奏しても民謡は民謡。ムーンライダーズはムーンライダーズ。土地と音楽への愛着と憎しみ哀しみ全部引っくるめて。そんな感じ。こういうものこそマニアでない人にも見て欲しいなあ。音楽ってこんなにいいもんなんだよって。

*

抒情文芸123号に俳句が佳作で載った。詩は遂に選外佳作からも漏れた。

あー、これはアレだな、行き当たりばったりに書いてないでしっかり勉強しろという事か。そういう時期なのかも知れん。吉増さんの夢なんか見ちゃってドキドキしてる場合じゃない。

2007年6月29日(金曜日)

生まれて初めてカルテに「胃癌疑い」と書かれた。すっげーびっくりした。フツー書かないだろぉそんなダイレクトによおぉ。

だってさ、問診して触診して「触って分かるしこりはありませんね」とか「症状から見て食道炎でしょうかね」とか言っておきながらいきなり目の前で堂々と「胃癌」て。「ま、胃癌て事はありませんが、一応“疑い”という事で」って、大雑把にも程があるってもんだべドクター。

というのも、このひと月ばかりろくに物を食えていないのである。食費が底をついたわけではなく、恋の病に冒されて食べ物がノドを通らないの☆とかいうのでもなく、単純に物が食えない。米の飯は二口ほどでいっぱいいっぱいになってしまうのでパン食にしてみたが一度に6枚切り食パン半分を押し込むのがやっと。無理やり牛乳で流し込むと腹を下すというていたらく。

まともに食えていないもんだから頭は働かないし体重はますます減るし通勤途中で目が回ってへたりこむし。そのおかげで先日のダイヤ大混乱に巻き込まれずに済んだけどな。元々悪運は強いのだ。これも日頃の善行の賜物よ。おーっほっほっほ。閑話休題。

初めは近所の内科で診てもらって薬を服んだがさっぱり効かず、かかりつけの精神科(内科も兼ねている)で薬を処方してもらってしばらく様子を見ていたが改善しないので相談してみたら「消化器専門で施設も整っている病院が近くにありますから」と紹介されて行ってみたのがこの大雑把クリニックというわけである。

体調の話なんてどうにもオチのつけようがないのでここには書かずにいたのだが、まさかこんなダークホースが控えていようとは。つーか、スペッシャルなオチを入手したので書いてるんだけどね。ふひひ(まったく嫌な奴だ)。

それはともかく速攻で胃カメラということに。あああ。こないだバリウム飲んだばっかなんだけどなー。ポリープは良性のはずなんだけどなー。

でも総合病院に行かずに個人医院に行ったおかげで即日検査が出来て良かった。大きい病院だと1ヶ月待ちとかザラだもんな。それまでどうしろと。いっそのこと入院できたら楽でいいのになー、などと6割方本気で思っていたところに大雑把な救世主が(市内の総合病院の内科に長年いて最近開業したんだそうで、お年はそれなりだがやたらとバイタリティに溢れた感じのドクターである)。最初、看護師さんに予定を聞いたら一番早くて来月の11日とかいうので(カンベンしてつかあさい)と心の中で思っていたら、「それじゃあ遅いなあ、なるべく早くやっちゃいたいでしょ?」と大雑把ドクター。はい、今日にでも、と言ったら、予定びっしりのカレンダーをしばし睨んで、「よし、今日の午後やっちゃいましょう」。おおお。言ってみるもんだ。大雑把ドクターは決断力がある。

で、1年ぶりの胃カメラになったわけだが、残念ながらここも鼻から入れる内視鏡ではなかった。開業して1年ほどだというからかなり期待したのだが。むー。

でも前にやった時と比べて若干手順が違った。

  1. 左腕に注射、緊張をほぐす安定剤とのこと
  2. しばらくしてノドに麻酔ゼリー、注射器で直接注入され気が動転して息を止めてしまう。あ、そうか、鼻で息すればいいんだ、と気付いた時にはガフッとなって半分くらい飲み込んでしまった
  3. 更にしばらくして右腕に注射、胃の動きを止める薬とのこと
  4. 仕上げに霧吹きでノドの奥を3回に分けて麻酔

注射も多いし霧吹きも多い。これが今風のやり方なのかしらん。

と、準備が出来たところに大雑把ドクター登場。ふむ、ここは技師さんじゃなくてドクター自ら検査してくれるのね、そりゃ話が早いってもんだわ。

喉頭から食道、胃とカメラが進んでいく。食道には異状がない模様。ちょっとほっとするも束の間、あっと言う間に胃のポリープが見つかる。素人目にも「あーこれこれ」という感じ。前に見つかったやつは突起状だったが、今日のやつは蚊に刺された痕のように白く盛り上がっている。

「こいつですね、ポリープ。かわいいポリープ」

大雑把ドクター…可愛いんですかこれ…「いやーん、見つかっちゃったぁ(ぽっ)」とでも言いましたかこいつは。すかさず写真を撮る大雑把ドクター。ひょっとして趣味で撮ってないだろうな、「かわいいポリープコレクション」とかいって。

そこから更に進んで行ったところで大雑把ドクターの手が「む?」という感じで止まる。「あー、これかあー」見てもよくわからない。

「ここんところがちょっとねー。十二指腸潰瘍のできそこないって感じね」(パシャ)

おーーーーーーい。いくら大雑把だからって、できそこないとはなんじゃああああ。って、立派な潰瘍じゃなくて良かったわけなんだけれども。

ここで大雑把ドクターがひと言、「シキソ」と言った。へ? 色素?

助手の人が何やら別の管を用意し出した。ひょっとしてこの内壁を着色するんでげすか、大雑把のダンナ。今まで以上にがっつりとモニターに食いつくオイラ。

と、さっきのポリープのところにカメラが戻ってきて、「はい」という大雑把な合図とともに青い液体がびしゃーっと胃壁にまき散らされた。青か! よりによって青か! よく見たら助手の人が持ってる管が透明で中が真っ青じゃないか。モニターに気を取られててこっちに気が付かなかったぜ、不覚。しかしなんかもうすっげービジュアル。ピンクの胃壁に青い色素っすよ。

んで、何故かポリープ部分だけは青く染まらず白いまま。「これでポリープがはっきり見えますからねー、これ一応取っといて検査しますからねー」

あー、ここでまたハサミの出番かーと思っていたらこれもまた前回とは違った。先端の丸い平べったい奴がにゅーっと出てきて大雑把ドクターが「はい、開けてー」と言うと、先端部分に丸い穴がぽこっと空いた。おおおお。ひょっとしてスライド式になっているのかっ。それをポリープに押しつけると「はい、閉じてー」。おおおおお。組織採取成功の証にだらりーと流れ出る血。ピンクに青に赤ですよ、なんか60年代の前衛芸術みたいな色合い。

さーこれで終わりだーとばかりにしゅるしゅると胃カメラが後退し始めたところで「ん?」と大雑把ドクター。何度か角度を変えてごにょごにょやっていたら胃壁の間にでっけえポリープ発見。「あー、胃壁の間に隠れてましたねえー」「こんなところに大きいのが隠れてたよー」…大雑把ドクター…やっぱりなんか変にポリープに愛着持ってませんか。

これも先端丸くんにぶちぶちやられて血だらけ。それでも痛みを感じないのに、物を食うと気持ちが悪くなる時ってのは一体どうなってるんだろうなあ。一度ライブで胃がもがき苦しむ様を見てみたいもんだ。

そんなこんなで胃カメラ終了。やっぱり途中で「うえっ」とも「げえっ」ともならなかった。助手の人に「お上手でしたねー」と言われるがどう返答していいのか分からない。胃カメラ上手…特技にはならんな。その後しばらく横になったまま休んでいるうちに体がぼんやりしてきた。今頃になって緊張ほぐし剤が効いてきたのか?

それから改めて説明を聞く。「十二指腸潰瘍になりかけですね、ここんところがちょっと白っぽくなってるでしょう」さっき撮った写真が何枚か並んでいて、よおおく見てみると、なるほど、確かに周りよりちょっと白っぽくなっているところがある。

「十二指腸潰瘍の治療と同じでいきますね、お薬服んで様子見て下さい、刺激物は避けて消化の良い物食べてね、全然良くならないようならすぐにまた来て下さい。あ、今日の分の薬、すぐ服んじゃえば?」

You、服んじゃいなYo! とでも言いかねない勢いである。うーむ、医師には軽快さも必要か。確かに、妙にもったいぶって話されるより、大雑把でも軽快にはっきりとその場で適切な判断を下された方が患者の方も楽だもんね。これは案外いい病院に当たったかも、精神科のドクターありがとう…と思っていたら、大雑把ドクターが、件の写真を眺めながら「うーん…どれがいいかなあ…」とのたまっている。はて。と、

「これ、あげましょう。あ、両方写ってるからこっちの方がいいかな?」

工エェェ(´д`)ェェエ工

今時はそんなサービスあるんすか…つか、そちらでは要らないんですかこれ…と思いつつ、自分で選んで貰ってきたのがこれ(ちょいとグロテスクなので苦手な人は見ない方がいいぞ)。

やっぱこんくらいのオチがねえと体調ネタは書けねえなあ。

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