■2010年7月4日(日曜日)
前回の日々録で「なんか寒い」と書いた途端に物凄く蒸し暑くなってきて金輪際天気のことなど書いてやらんぞと思った。いやしかし、毎年こんなに蒸し暑かったか? まるで沖縄だ。
そんな中、吉増さんも動くしバクチクさんもツアー決まるしであわあわしておるところですが、7月11日、今度の日曜日、TOKYOポエケットというイベントに出ることにしました。こないだの文学フリマ並みにいたたまれない気分になることうけあいではあるんだが…なんか作ったりやったりしたいんだよなあ。新しいものが書ければいいのですが、どうだろうなあ。そんな感じで。
にしてもバクチクさんの今回のツアー、なかなかスケジュールが組みにくい。近場だけだと前半に集中しそうなんだよなー。ツアー初盤も面白いんだけどね。もういやってくらいあっちゃんにまみれたい。ああ。
■2010年7月19日(月曜日)
暑い。まったくどうかしておる。「口に出すと余計暑くなる」などという輩がおるが口に出さなかったらわからないじゃないか。何も言わずにいたら「あの人何も言わないわきっと暑くないのね」などといらぬ誤解を受けるではないか。ディスコミュニケーションの世の中なのだ。だから言うぞ。暑い。暑いよまったく。っていうくらい暑い。
というわけでここ一週間くらいを振り返ってみる。
11日(日曜日)。
ふと思い立って参加したポエケットの会場をそそくさと後にし雨の中銀座BLDギャラリーに赴く。吉増さんが「盲いた黄金の庭」という写真集を出されたのを記念して同名の展覧会が開かれているのだがその関連イベントということでほぼ毎週トークイベントなどが催されており今日はその中のひとつ。この前に6月27日のイベントにも行ったのだが時間ぎりぎりに到着したため展示がゆっくり見られなかったので今日は少し早めに行って展示を堪能しようかと。
これがまー。
白い壁に淡々と展示されている写真は多くがパノラマ写真を縦長にしたみたいな格好になってて殆どが例の二重露光、パネルには吉増さんの直筆でなにやら書かれているものもありパネル下に小さなプレートが付加されているものもありプレートには写植で吉増さんの言葉。
おおう…当たり前だが吉増さん尽くしである。メインの部屋ともうひとつ小さめの部屋とふたつだけなのだが吉増さんで腹いっぱいという感じである。
イベントの方は写真集の製作に携わった稲川方人さん、田中勲さんに樋口良澄さんによるお話。3万点に及ぶ膨大な作品の中からのセレクト、構成、それがいかに大変だったか、制作過程の終了間際に吉増さんから”言葉”が送られてきて大変な目に遭った、などなど、当事者の方のお話はそれだけでも貴重なんですが、稲川さんは吉増さんとの長いお付き合いの中で色々と思うところもあるらしく、それはそれは愛に溢れたツッコミをされてました。吉増さんは普通なら見えてそうなものがほんとに見えてないからなー。そこをご本人の前でずばっとおっしゃったのが愛ですわね。稲川さんプレゼンツの吉増さん映画、是非拝見しとうございます。
13日(火曜日)。
ポレポレ東中野でレイトショー公開されている映画「ひとりごとのように」を見に行く。前にも見たんだが明日はBLDギャラリーで大野慶人さんが追悼のパフォーマンスをされる、その前にもう一度スクリーンで見たかったので。
映画の中の大野一雄さんはそれはそれは真剣で、とにもかくにもダンスダンスダンス、全身というか存在そのものが舞踏になっていてなんというか頭が下がる思い。映画ラスト、とことんまで踊り抜こうとするその姿に(どうぞいつまでも踊り続けていてください)と思ってしまう、もう亡くなったことはわかっているのだけれど(どうぞいつまでも)と思ってしまう、そんな感覚だった。
そして14日(水曜日)。
BLDギャラリーの展示は今日から2期目ということで、会場に入ってその途端、うわっ…と圧倒された、正面の壁にスクリーンが設置されていたのがよかったのかなんなのかわからんがとにかくなんともチャレンジングな展示構成。すげえな、と思う。中でとても気になる、気に入った写真があったのでその下にどっかと陣取って開演を待つ(椅子のないステージングだった)。
うっと場内が暗くなってスクリーンに映し出されたのは「石狩の鼻曲がり」であった…見た事はないんだけど見ればわかるというか。川とシャケ。そこに大野さん…映像の中に大野一雄さんが、場内に大野慶人さんが。慶人さんは手に何かはめている、と思ったら大野一雄さんのお人形だ…映像のあちら側とこちら側で大野一雄さんとお人形の大野一雄さんの邂逅…いや、まるではじめからそうであることがわかっていたかのような、奇跡のような舞踏です…なんだか嬉しくて涙が出てくる。大野慶人さんを介して大野一雄さんが踊られている。なんということか。
舞踏の後、吉増さんや樋口さんを交えてのトークセッションですが、慶人さんのひょうひょうとした語り口に大野一雄さんのお人柄が偲ばれます…舞踏とはなんですかと問われて、「いのちを大事にする」と答えられたとのこと、そのことの意味(意味ではないかもな)がしみじみと伝わってくるような、穏やかな、和やかな、明るい空気。そう、大野さんの舞踏は明るいのだなあ。水木しげるさんのマンガが明るいように、というのはおかしいかしら。でもそんな感じがするのです、水木さんも戦争から生還した方だ。そんな明るい空気のままにもう一度大野さんが踊られて会はお開きに。
その後、沢山の方に囲まれる吉増さんをなんとかつかまえて(はしたない)ご挨拶を…と、「ありがとうねー、読みましたよー」とのお言葉。先日出した新刊を郵送したものをご覧頂けたらしい。「よくもまあ…こんな、骨のある…」というようなことをおっしゃって、
「お前も…」
「?」
「お前もすごいなあ…」
詩を読むようにそうおっしゃった。
吉増さんは何をご覧になっても褒めて下さる。年賀状ひとつでも、イベントの感想でもなんでも、ご覧になっては「よかった」と言って下さる。それがわかっていて、その言葉が欲しくて送りつけるようなところもあるのだが(あさましい)、まさかお前呼ばわりされようとは。吉増さんはオイラに対して言ったのではないのかも知れないが、この言葉を聞いたのはオイラだけなのだ。だからいいのだ。
それから「僕ら生きているものがこうしてつないでいかなくちゃね」とおっしゃったので「吉増さんはあと500年くらい生きてくださいねー」と申し上げたら「俺1000年くらい生きよっかなーあっはっは」と笑っておいでだった。嬉しい。
その後はひたすら挙動不審の極み、頂いたお土産のペーパーを丸めた奴(この丸め紙ってなにか名前はないのかね)で頭をぽこぽこと叩いてはにへにへと顔がにやけるという完全に怪しい奴と化して地下鉄を乗り継ぎ、こんな日なんだから祝杯あげるべとばかりにエビスビールなんか買っちゃって自室でひとり乾杯。うまいっ。これまでで一番嬉しいことかも知れんなあ。生きるってすばらしい。嬉しい嬉しい嬉しい…さあ、これでまた七転八倒の日々が始まるぞー。
*
そんな感じで。
この3連休はあまりの暑さに呆然とし、ちょっと出かけたいところがあったのだがあまりの暑さに断念し、取りあえずコミケカタログをチェックし始めるもあまりの暑さにリタイア(何故)という有り様。せめて夜だけでももうちょっと気温が下がらんかな…涼しくなれとは言わんから…そこんとこどうでしょう夏将軍…。