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slip into chaos - 日々録(2018年10月)

2018年10月28日(日曜日)

猫が死んだ。妹の家に最初にきたやつで、8年前当時3歳くらいだったらしい。

この夏の終わり、久しぶりに妹宅に赴いたところなんとも痩せこけた三毛猫が出迎えに来て、誰かと思ったらそれがこいつだった。とにかくにゃーとよく鳴く猫だったがもう掠れて声も出なくなっており、それでも客を出迎えるのが勤めとばかりに玄関先でしゃー、と鳴いた。

獣医によれば甲状腺の病気で、食欲はあるが食べても痩せてしまうのだという。ずっとキャットフードしか食べていなかったのが、食卓によじ登り人の食事に手を出すようになりいろいろ食べたがるが結果戻してしまう。遺伝的なものらしく、延命できないこともないが完治は望めないとのこと。それでも自力で動けるので、あとは見守るしかない、という状況だった。

しばらくぶりだったので自分のことは覚えてはいなさそうだったが(それは他の猫たちも同様)、何度か通っているうちに馴れてきてゆっくり撫でさせてくれるようにもなったし手から食べ物を食べるようにもなった。 ある日、テレビを見ながらくつろいでいるとそいつが腿に脚をかけてきた。他の猫なら重くてうう、となるところだが、そいつはあまりにも小さくて軽くて、じっとしていたらすっかり腿の上に乗ってきて丸くなった。撫でると掌に骨があたる。こんなに痩せていても呼吸をしていて温かくて、でも小さくて軽くて……撫でていたら寝てしまったのでそのまま身動き出来なくなり10分くらいそうしていた、と思う。

その翌週、明け方から危篤状態になったと連絡があり、その日、甥が学校から帰ってくるのを待っていたかのように、家族に見守られる中、静かに息を引き取ったという。

他の猫たちはあまり変わった様子を見せなかったようだが、普段出てきたがらないやつもそっと出てきて様子を覗いたりしていたらしい。先住猫として後から来た猫たちを面倒見よく迎えてきた姐さん肌の猫だったというから、それぞれに思うところはあったのかも知れない。

それにしても、猫を亡くすというのがこんな気持ちになることだとは……骨ばった手触り、軽くて温かい体、しゃーという声。忘れることはないんだろうなと思う。

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